新人と編集者と赤だらけの原稿「ニーナとうさぎと魔法の戦車/兎月竜之介」

最近、twitterのTLとかオフ会でも評判の良かった、SD小説新人賞大賞受賞作の「ニーナとうさぎと魔法の戦車兎月竜之介」を読みました。

ニーナとうさぎと魔法の戦車 (集英社スーパーダッシュ文庫)

ニーナとうさぎと魔法の戦車 (集英社スーパーダッシュ文庫)

いやぁ、評判通り、いや、評判以上!
過酷な現実と悪夢のような過去と絶望が約束された未来の中で語られる、反吐が出るくらいに美しい理想論。
これだ、ぼくが待ってたのはこれだよ!

「相手が悪意で攻めるなら、こちらは善意で反撃しよう。憎しみによる暴力がはびこっているのなら、正しい力の使い方を教えてやろう。首なしラビッツというチームはね、戦時中にはあり得なかった正義の味方なのさ!」

クソみたいな世界にぶつける、とても純粋な理想、希望。
誠実に生きるためには、世界は厳しすぎる。
それでも、生きていかなければならない。
強くなければ生きていけない、優しくなければ生きていく資格がない
その言葉の通りに。


ニーナたちが、魔法と戦車で、クソったれた世界に立ち向かっていった姿を見て、ギターと歌で世界と喧嘩した、ロンドンパンクのバンドを思い出した。
「月に手を伸ばせ!たとえ届かなくても」
そう言って、駆け抜けていったバンドを。


というわけで、テーマはとっても良かったし、魔法を使うのに必要な魔法板のアイデアもとても良かった!
なにあれ、口にくわえるとか!
エロいよ!エロいよ!
百合百合してるよ!
というより、なにいちゃいちゃしてるんだよ!
もう、おまえら結婚しちゃえよ!


ただ、ひとつだけ残念だったのが、細かな語句の間違いとか目についたこと。
戦車の数え方は「機」じゃなくて「両」もしくは「台」だし、白兵戦は昼間に戦闘を行うことじゃなくて、刀剣などを使った近接戦闘のことをさします。
#白兵戦に近距離の銃撃戦〜徒手格闘術も入れることもあるけど。


百歩譲って、ニーナの世界では、戦車は「機」で数えて、白兵戦は昼間の戦闘を意味しているという設定だったとしても、現実世界と乖離した設定(しかもこだわるところじゃない設定)なんだから、何らかの説明があってしかるべきなんじゃ?と思う。


もし、作者が単に間違っていたとすれば、責められるのは作者じゃなくて、担当の編集者だと思う。
せっかく、新人でこれだけ素晴らしいものを書いてきたんだから、編集者は上記のような細かいミスはきちんと見つけてあげるべきだし、それこそが、編集者の仕事(のひとつ)だと思う。


[Today's tune]London Calling/The Clash