遥かな蒼穹の向こうへ「とある飛空士への恋歌5/犬村小六」

とある飛空士への恋歌 5 (ガガガ文庫)

とある飛空士への恋歌 5 (ガガガ文庫)

運命の恋の物語、堂々の完結!


身分違いの許されざる恋を丁寧に描いた「とある飛空士への追憶」。
そして、それと世界観を同じくする、敵と味方、高い壁と過酷な運命に彩られた若者の恋と青春の「とある飛空士への恋歌」。
どちらも、これぞ王道! なんですが、しっかりと描かれた王道というのは、これほどに人を感動させるのか! と。


「恋歌」は、途中、容赦なく……というより、そこまで納得できる理由なく、子どもたちが戦争に巻き込まれて、戦って死ぬので、そのあたりはちょっとどうだろう……と思ったりもするんですが、それでも、このラストのためであったなら……と考えると、まだ納得はできるかなぁ、とか……
いや、小説の中の話に、現実世界の話を持ち込むのはどうかというのはあるのかもしれないけど、少年兵の問題があるのも確かなので、実際に銃を持って殺し合いをしてる少年たちには、こんな小説みたいな話はないんだろうなぁ、と思うと、その部分については、素直に読むことはできないんですよね……


と言いながらも、最終巻は、半分もいく前からずっと泣きっぱなしだったんですけどね……
最終巻、若干駆け足、というのは感じたけど、ここまで盛り上がったのをだらだらと続けるよりは、やっぱり、こういう終わり方が良かったのかなぁ、とか。
最後の締めには、本当にふさわしい巻だったと思います。
見せ場はやはり、「追憶」でもあった飛行機のダンスシーン!
「追憶」のシーンと重なって、青い空に描かれる軌跡が見えるようで……
それまで、砲火の花が咲き、仲間たちが命を散らせていった空に舞うカルたちの航跡。
ここが本当にクライマックスで、そのあとのシーンは、もう、余韻でいっぱいでした……


「追憶」のあの人とかあの人もちょっと出てきて、前作を読んでる人へのサービスもあったりして、読みどころはいっぱい。
いやいや、ほんとにいい小説でした。