セリオさんお誕生日おめでとうSS書いた!

というわけで、2月12日は、To Heartのセリオさんの誕生日なので、もうそろそろ国民の祝日になってもいいはずだと思いながら、ごろごろ転がりながらセリオさんSSを書いてお祝いします。

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 朝です!
 今日も素敵な朝です!
 寒さの厳しい二月の朝ですが、空は高く青くて、空気は澄み渡って凛とした雰囲気が、とても心地良いのです。
「……でも、ちょっと寒いよね?」
「あ、マスター、起きたのですね。おはようございます」
「うん、おはよう。でも、寒いから、窓閉めてもらえると嬉しいかな……」
「そうですね。でも、これでマスターもはっきりくっきりと目が覚めましたよね?」
 わたしのマスターは、朝が苦手なので、こうやって起こすのが一番楽なのです。
「もう、ぼくはセリオと違って、朝も苦手だけど寒いのも苦手なんだよ……」
 その通りで、わたしはロボット──メイドロボなので、どちらかというと、普通の人間だと寒いくらいなのが好きなんですけどね。でも、マスターが寒いというのであれば、素直に窓を閉めますよ。
 と──
「マスター、顔がちょっと赤いですよ?」
「え、そうかな? セリオがこんなに近くにいるからかな?」
 そう言いながら、わたしの身体をぐいっと引き寄せます。
「そ、そんな、マスター……こんな朝から……って、あれ?」
 なんか、マスターとっても身体が熱いし、息も不自然に熱いし……
 ぺたっ。掌でマスターのおでこに触れます。
「?」
「──マスター、熱がありますね」
 わたしの掌は熱センサ!
「そう言えば、頭がぼおっとしてるかも……でも、セリオと触れ合ってるからかな、って思ってた……」
「そんなわけありますか……最近は、インフルエンザも流行ってるみたいですし、今日はお休みして病院へ行くのが良いと思います」
 さすがのわたし──来栖川重工製のハイエンドメイドロボHM-13SERIOでも、それなりの設備や道具がなければ、病気の治療も何もできないのです。例えば、インフルエンザの検査とか、検査キットがなければできないですし、薬もないですし……

§

 というわけで、病院から帰宅です。
「う〜まさか、本当にインフルエンザだったとは……」
 ベッドに横になったマスターが呟きます。
「もう、無理するからですよ……」
 最近は、ずっとお仕事で遅かったですし。
「でも、インフルエンザって、無理してるとかあんまり関係なくない?」
「いえいえ、無理して体力が落ちているから、ウイルスにもやられるんです! しばらくゆっくりと休んでください」
「まぁ、仕事も行けないし、仕方ないか……」
 うん、わかれば良いのです。
「でも、ちょっと嬉しいかな?」
「どうしてですか? やはり、仕事を休めて──」
「いや、こうやって休んで一日寝てれば、ずっとセリオさんと一緒にいられるじゃない?」
 そう言って、にっこりと笑います。熱で苦しいはずなのに、とっても、とっても嬉しそうに。もう、その笑顔が、とってもずるくてずるくて……
「そんなこと言ってないで、ちょっと寝てください!」
 わたしは、恥ずかしさをごまかすようにそう言うしかありませんでした。

§

 ベッドで休むマスターを眺めながら、ゆっくりと時間が過ぎていきます。
 わたしにうつることがないから、こうやってベッド脇で看病していても問題ないのは嬉しいけれど、マスターと苦しみを分け合えないというのは、ちょっとさみしい。
 普段はそんなに感じることはないけれど、生活のはしはしで、こうやって、わたしとマスター──人間の違いというのを感じて、どことなくさみしい気持ちになります。
 これから先、わたしとマスターはどれくらい一緒にいられるのでしょうか?
 人間とロボットの違い。
 わたしは、マスターが感じる寒さを感じることができない。
 わたしは、マスターが苦しむ熱を感じることができない。
 わたしがこう思うことはおこがましいのか。
 わたしは、ずっと、ずっとマスターとともにありたい、と思う。
 でも、その望みは叶えられるの?

 気がつくと、外には雪がつらつき始めていました。
「──あぁ、雪になったのか」
「マスター、起きてたんですね」
「うん」
 マスターはそう言って、窓の外を眺めています。
「こっちの雪は、やっぱり雪って感じがしないなぁ」
「どういうことですか?」
「いや、やっぱり、雪って、もっといっぱい降って、積もって、街中を白く染め上げるような感じでさ……ぼくの地元ってそんな感じだからね」
 マスターの地元……生まれ育った土地。
「羨ましいです」
「どうして? 一年の半分近くは雪に埋もれるし、特に面白いものもないような街だよ」
「だって、わたしには地元と呼べるような場所なんてないですから」
 わたしが産まれたのは、来栖川重工の工場──のはず。わたしが覚えているのは、電源が入れられて、目が覚めて、最初に見たマスターの少し不安そうな、そして、嬉しそうな表情だけ。
「──地元ってさ、帰れる場所、なんだよ。世界のどこにいようと帰れる場所。いつ、どうやって過ごしたか、じゃなくてさ、帰りたい、って思ったときに帰れる場所。そういう場所、セリオにはない?」
 わたしが帰りたい場所──
「わたしが帰る場所は、マスター、あなたの隣しかありません」
「じゃあ、ずっと、ぼくと一緒にいてくれる?」
 上半身を起こしたマスターが、わたしをそっと抱き寄せます。
「はい──もちろんです」
 人間とロボットの違いなんて、どうだっていい。
 マスターがわたしを求めてくれるなら……わたしは、ずっとあなたのそばにいます。

§

「それにしても、こんな日に寝込むなんてなぁ……」
「日頃忙しいんですから、ゆっくりしてください」
「いや、倒れるなら、来週くらいまではがんばりたかったかな、って」
「? なにか、お仕事の締め切りとかですか?」
「いや、だって、今日は一年で一番大切な日じゃない……せっかくだから、プレゼントとかいろいろ考えてたのに……」
「?」
「こんな状態でなんだけどさ……セリオ、誕生日おめでとう。ずっと、ずっとぼくのそばにいてね」
「もう……そんなことを言うんだったら、早く治すことを考えてください!」


"My Life,Your Beat." is over.

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