「帳簿の世界史/ジェイコブ・ソール(文藝春秋)」の感想です
ちょっと前に、ソーシャルゲームで返金騒動とかなんとか、やってないのでよくわかんないですけど、とにかくそういう騒動があって、それで返金ではなくてゲーム内のアイテムで補填するということがあって、ちょっとこの流れっていうのは面白いな、と思って、会計と歴史について書いてある本はないかな? と思ってTwitterで聞いてみたところ、それっぽい本をオススメされたんですが、その本が売ってなかったんで代わりに読んだのがこの本「帳簿の世界史/ジェイコブ・ソール(文藝春秋)」です。
- 作者: ジェイコブソール,Jacob Soll,村井章子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2015/04/08
- メディア: 単行本
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内容としては、ギリシア、ローマからリーマンショックに至るまで、世界の歴史の中で「帳簿」というものがどういう役割を果たしてきたのか、というのを丁寧に説明するもので、実際に会計に関する知識がなかったとしても、十分に興味深く読めるものです。なので、非常にオススメです。
そんな本書の中で浮かび上がってきたのは、「権力を手にした者たちは必ずと言っていいほど『帳簿=会計』を大切にしていた」ということと、「その権力を手放す前に、『帳簿』を手放している」というシンプルな事実。特に、フランスブルボン朝の事例などは、象徴的だと思います。あと興味深かったのは、アメリカ合衆国建国の父たちの帳簿に対する意識です。
そして、終章で述べられている通り、現在の複雑怪奇な金融システムの中で、どうやって帳簿=会計と向き合っていくのか? と、ある意味読者への問いかけで終わっているというのも、とても面白いし、とりあえず明日から複式簿記で家計簿つけるかな……くらいには考えてしまう本です。
で、話は変わります。
本書ではあくまで帳簿=会計という観点から語られていますが、現代においては常識ともなっていると思いますし、そもそも冒頭に書いたように、お金・富=情報なわけです。事実、銀行や証券会社、各種取引を行う商社などは、文字どおり金融システム=情報システムで出来上がっているようなものです。
#このあたりは「システム障害はなぜ二度起きたか/日経コンピュータ編集部」でも触れられている部分です。
- 作者: 日経コンピュータ
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2011/07/28
- メディア: 単行本
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いかにして情報を収集し、集積させ、分類し、そしてそこから価値を生み出していくか。
例えば、30年前、50年前──まだ情報を収集する手段が本やテレビ、ラジオ、新聞などのマスメディア中心だった頃であれば、いや、20年前、まだインターネットが一般的ではなかった頃であれば、そこまで難しくはなかったかもしれません。
#とは言って、簡単だったとは言いませんが。
しかし、今や、インターネットという基盤があり、その上でTwitterやFacebookをはじめとしたSNSなど、情報が生まれるスピードはそれまでとは比較にならないほどに多くなり、私たちが取得する情報の量も恐ろしいほどに多くなりました。質・量・分野・深さ……どれも莫大なものとなっています。
そんな、情報の濁流の中で、私たちは毎日何かを受け取り、そして発信しているのです。
そして、「悪貨は良貨を駆逐する」という有名な言葉があるように、悪い情報は良い情報を駆逐します。例えば、5年前の東日本大震災の時に溢れたデマのように。Twitterでも、毎日のように流されるデマ、マッチポンプで騒動を演出するまとめブログなどなど、悪貨の例には事欠きません。そんな悪貨ばかりの情報の中で、「情報の収支」をプラスにするためにはどうすればいいのか?
その答えの一つが、この本で示されている、「正確な帳簿を誠実につけること」なのではないか、と思うのです。
例えば、ダーウィンは会計だけではなく、あらゆるものを複式帳簿でノートに書き表していたそうです。そこまでしなくても、まずは、正確に情報についての収支を考えてみるだけでも、だいぶ違うのではないだろうか? と考えています。
まぁ、別に本当に複式で情報帳簿つけろって言ってるわけじゃなくて、どういう情報を受け取ったか(例えばこの記事だって情報の一つです)、どういう情報をアウトプットしているのか、というような内容をノートに書くだけだって十分です。
──ノートに書く?
はい、というわけで、そういうノートを書いてみようとは思うけど、どうやって書こうかなぁ、と迷ったら、ぜひ、こちらも読んでみていただけると、非常にありがたいです。
あなたがつくるノート術 (Nth Library Non-fiction)
- 作者: 長屋言人
- 発売日: 2016/01/10
- メディア: Kindle版
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しかし、「帳簿の世界史」読むのに1週間近くかかったので、やっと次の本が読める……って感じ。ハードカバーは重くて大変だった……。