赤×ピンク(桜庭一樹)

赤×ピンク (ファミ通文庫)

赤×ピンク (ファミ通文庫)

非合法(?)ファイトクラブでたたかっている「彼女」たち。
「生きることの偏差値」が42くらいの「まゆ」、「みんなのおもちゃ」の「ミーコ」、そして「皐月」。彼女たちを中心にした、「私はここにいても良いの?」と「私はここにいるよ!」という叫びの物語。
やっぱり、格闘のようなある意味原始的なものと精神論的なものはあうなぁ、と思ったりします。この、たたかうということを通して何かを得ようとするのは、「〜道」といっしょなのかなぁ、とか。勝つとか負けるという以上に、たたかう中で得るものがある、ということ。
観客の喜ぶようにしてきたミーコが、自分の「動くまま」にハイキックを放ったあとの咆哮、そして、打ち抜かれても快感だったという千夏。
格闘技というのは不思議なもので、リングの中に立つのは一人だったりするので、「自分との戦い」なんていう格闘家も多かったりしますが、なんだかんだ言っても相手と戦わなきゃ勝てないわけで、つまりは、個人技でありながら一人じゃできない、という奇妙なものだったりします。
彼女たち−−皐月は特にですが−−一人で戦ってました。でも、みんな檻の中で「ひとり」じゃなくなっていきました。
結局、「居心地が悪い」と思いながらも、どうしてもこの場所でしか生きていけないわけで。
だから、「ボクはここにいても良いの?」そう問い続けるしかできなくて。
きっとこういうことばっかりを書いていると、甘いとか言われるとは思うんですけど、今の自分にはそうすることしかできないし。


「ここにいるよ」という言葉に、いったい誰が応えてくれるんだろうか?
ふと、セカイ系というのは、この叫びに気が付いてくれる誰かのことを書いた小説なのかなぁ、とか思ったんですが、微妙に違いますね。


まぁ、それで、ですよ。
あれじゃないですか。
ミーコとまゆの関係とか、ミーコが皐月の部屋に転がり込んだりだとか、皐月と千夏があれだったりだとか、とにかくそんなに一杯やられたら、百合好きとしては、うれしい限りで。


というわけで、やっぱりしまらないなぁ、と。


[Today's tune]プラスチックルームと雨の庭/fra-foa