摩天楼の怪人(島田荘司)
- 作者: 島田荘司
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2005/10
- メディア: 単行本
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ハードカバーです。
ちょっと高いです。
でも、面白いです。わーい。
往年の大女優が死の床で告白した、殺人の記憶。
ニューヨークの摩天楼を舞台にした不可能犯罪と、かいま見える”ファントム”の影。
暗闇の中で不可能を可能にしたのは? ファントムの正体は? デジャブのような「自殺」の真相とは?
そして、明らかになる全ての真実とは?
いかにも島荘らしいスケールの大きなストーリーです。
高層ビルの殺人といえば、クイーンの国名シリーズのいくつかにあるように、空中に浮かぶ絶対の密室として描かれることが多く、閉ざされたイメージが強いです。
しかし、空を切り刻む摩天楼の所行のように、大胆なトリックに、驚愕すること間違いなしです。
空中につきだしたガラスのテラスが、このミステリを象徴しているのかもしれません。
島荘といえば、壮大なミステリにいろいろな問題を絡めて、それを卓越した筆致で見事に描ききりますが、今回も、様々な問題を見事に描いています。
ニューヨークという街が抱える暗部。
若者を襲った未曾有の大戦争。
そして何よりも、高層ビルーー人間の創り出した建造物が持つ、不思議な魅力と恐ろしさ。
そういったものに立ち向かい、謎を解き明かす御手洗の姿を思い浮かべるとき、私の脳裏には鋼鉄のバイクに乗り颯爽と登場した、異邦の騎士のあのシーンが思い浮かぶのです。
[Today's tune]Creep/Radiohead