GOSICK2 その罪は名もなき(桜庭一樹)

あえて言おう、誤解を恐れずに言おう、いや、今だからこそ声高らかに告げる必要があろう。
はっきり言う。
桜庭一樹にカーを期待しても良いんじゃないか? と。
生誕百年を記念しつつも、まったくお祝いムードも何もない、本格ミステリ史に燦然と輝く奇星J・D・カー。クイーンのような洗練もなければ、クリスティーのような一般性もない。どうしてもいまいちメジャーにはなれないが、それでも一部の愛好家には何よりも好まれているカー。
例えばですよ、ゴシックだって、ヴィクトリカをちょっとはげてデブのオヤジにして、閉じこもっている場所を図書館の塔の上からロンドンのビルに換えてみるだけで、ほら、もうHMのできあがり。
……いや、ヴィクトリカとHMの間には、どうしても越えられない壁があることはわかりますが、あの一見底意地の悪いところとか他人を見下すところとか、実は結構人情家というところとか、どうしてもHMやフェル博士とイメージがかぶるんですよねぇ。というより、ヴィクトリカかわいいよヴィクトリカ。占い聞いて涙目で出てきたヴィクトリカのイラストなんて、いったいもうどうしたものかと。それに、357ページからなんて、もうもう、いや、これ以上どうしろと? もう何も出ないですよ?
……おかしいなぁ、そっち方向の属性はないはずなんだけどなぁ。


ちなみに、現代側のトリックとかは単純でまぁ、良いとしても、昔の方のトリックも、あれだけびしっと伏線張ってるから、そこそこわかりやすかったんじゃないかと。時間の不正確さ、という時点でアレは疑うことができるだろうし、冒頭ののみの市のシーンも良いヒントになっていたし。……それに、こういうのってそれこそカーでありそうじゃないですか?


というわけで、今年はカーの生誕百年記念です。
みんなカーを読めばいいと思うよ?

[Today's tune]On A Day Like Today/Keane