青年のための読書クラブ(桜庭一樹)

青年のための読書クラブ

青年のための読書クラブ

女子校もの3連発のトリを飾るのは、桜庭一樹の新作、青年のための読書クラブです。
カトリックの女子校で、幼稚園から大学までの一貫教育と、それなんてリリアン? な感じですが、残念ながら赤薔薇も黄薔薇白薔薇も出てきません。王子は出てくるけど、令ちゃんじゃないです。
山百合会──じゃなくて、西の官邸こと生徒会に、瞳子は残念ながらいない演劇部が2大勢力として覇を荒そう学園の南、ひっそりとつぶれそうな煉瓦の建物に潜むのが「読書クラブ」。
そこは、「異形の少女たちの一時の憩いの場」。
彼女たちが見つめた、そして、自ら主役となったいくつもの「事件」。
同じ女子校と言っても、ヘビイチゴサナトリウムとも、マリみてともまったく違った、幻想的で、そして猥雑な世界。
彼女たちにとって、学園は世界であり、そして、箱庭であり、「社会」の荒波に揺れる小舟でしかなく。
小さな箱船でおこる、不可思議であり、衒学的な事件。
読みおわる頃には、頭の中でいくつもの言葉と場面と風景と音がグルグルと回っていることと思います。
ああ、本当に不思議だ。
赤朽葉のように、読んだ瞬間に傑作! と言うわけでもないし、七竈のように、不思議にあとを引く感じでもない。
それでも、じわりじわりとしみこんでくる感覚。
──一般的に、最もなんでもありなレーベルであるライトノベルレーベルから出してるGOSICKシリーズが、桜庭一樹でいちばん「大人しい」んだよなぁ……。

[Today's tune]吐く血/Syrup16g