犬はどこだ(米澤穂信)

犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)

犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)

帯の言葉「犬捜し専門(希望)、25歳の私立探偵、最初の事件」というので、ハードボイルドものかなぁ、とか思ってましたが、微妙に違ったです。
まず、主人公の設定が良いです。
25歳で仕事を辞めて探偵をはじめるとかって、非常にうらやましいんですがっ。
で、全体的には現代風ハードボイルドという感じでうまくまとまっていたんじゃないかと思われます。インターネットも、中心としてではなく、あくまで自然と風景の一部として出てきているのが良いかと。
で、何気にミステリとしても、良かったんじゃないかと。
伏線もラストの解決部分も、好みでした。
いや、ほんとにこのラストというのはなかなか良いなぁ、と。
さてさて、このラストから、探偵というものの宿命というか、そういったものに対して思いをはせたりしてみました。探偵は、結局のところ傍観者である、ということで。探偵が事件を解決すると言うことは、傍観者でありながら事件という事象に積極的に関与するという矛盾した行動だったりします。個人的には、後期クイーン問題などの探偵問題のそもそもの発端は、こういう矛盾性に起因しているんじゃないかと思います。
ところで、この「犬はどこだ」は、この問題について、逆転の発想というか、はっきりした回答を出しています。
それは、「探偵は傍観者であり続ける」という明快かつ、勇気がないとできない回答です。
それでありながら本格ミステリである、というのは、本格ミステリに必要な要素というのは、容疑者を集めてさてと言い、といったシチュエーションではなく、大きな謎とそれに対する論理的な回答の2点である、ということなのでしょう。


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