電子の星 池袋ウエストゲートパーク4(石田衣良)
- 作者: 石田衣良
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/09/02
- メディア: 文庫
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重たい現実を、あくまでライトに生きていくというのは、今の世の中にあっているんだと思います。まぁ、だからこれだけ人気も出てるんでしょうけど。
実のところ、池袋に行ったことはなかったりしますが、石田衣良が描く池袋と、実際の池袋はどう違うのかなぁ、とか。最近は池袋方面にもとある喫茶店が増え始めているようなので、そのうちIWGPでもそういう喫茶店が出てくるのかなぁ、とか。
メイドとちょっとした恋に落ちるマコトとかって、まぁ、べたすぎですか。
ところで、電子の星の中の一編、ワルツ・フォー・ベビーでは、そのタイトル通りビル・エヴァンズのジャズが流れていたりするわけで、思いつくままに聴いてみた。
Waltz For Debbyというのは、ジャズの世界──いや、音楽の世界にある数少ない奇跡のうちのひとつなんだろうと思う。
ヴィレッジ・バンガードでの最終日に録音された、誰の耳にも疑いのない名演奏の数々。
そして、この最高の演奏が記録されることは、もう二度となかった。
こんなにもメロディアスでリズミカルなベースを聴かせることなく、天才ベーシスト、スコット・ラファロはその11日後に交通事故で夭折。
ビル自身もその最期は決して穏やかなものではなかっただろう。
離婚した妻や、兄の自殺。ドラッグでぼろぼろになっていく身体。
そんなこれから先起こるだろうという悲劇があるにもかかわらず、Waltz For Debbyの演奏はどこまでも穏やかで優しく、ささやくようなピアノに、包み込むようなベース、鼓動を重ねるようなドラム。
そう、あまりにこの音が切なすぎるから、きっと涙を止めることができないのだろう。
[Today's tune]Waltz For Debby/Bill Evans Trio