終末のフール(伊坂幸太郎)

終末のフール

終末のフール

「世界が終わる」というのが分かってしまったとき、自分たちは、いったいどうやって最後を迎えようとするんだろう? という小説です。
ミステリっぽいのかなぁ、と思ったら、そんなことは全くなく。
様々な年代のそれぞれの時が描かれていますが、それでもやっぱり”青春”なんですよね。
後ろ向きな世界の中で、どうやって前に向かっていくのか? ということなのかなぁ。


ええと、「世界の終わり」って、セカイ系でよく見ますよね。
ミステリだとクロック城がそうだったし、コミックだとサイカノがそのままだったし、イリヤの空〜も、結局は何とかなったけど、そんな感じの話だったはず。
ただ、そういうのと比べると、終末のフールはちょっと違うかな、と。
他のものが、先が見えている状況の中で、いかに「キミとボク」の関係を作っていくのか? 「キミとボク」の関係から、どうやって「自分」を見つけるのか? というものだったのに比べて、終末のフールは、「キミとボク」だけでなく、自分と、それに繋がるできるだけ多くの人たち、という感じがするんですよ。
「演劇のオール」が、まさにそうだったんじゃないかと。
描かれているのは、偽物の家族なんですが、そこにあるのは本物よりも本物らしい人のつながり。
誰かと繋がることを始めようとする「冬眠のガール」、
失われた絆を修復しようとする「終末のフール」、
これから産まれゆく「太陽のシール」、
止まってしまった時間を動かそうとする「籠城のビール」、
誰かと、繋がるために、自分を強くしようと言う「鋼鉄のウール」、
もう戻らない絆のために「天体のオール」、
そして、たとえどれほどに先が短ろうとも、進む明日があるのなら「深海のボール」。
どんな形であろうとも、先に進まなきゃ行けないんだという8つのメッセージ。