片想い(東野圭吾)

片想い (文春文庫)

片想い (文春文庫)

そんな戯言を吐きつつも、しっとりと読了。
あー、やっぱり東野は良いなぁ、と。
これだけ良いのが揃ってるとなると、未読のものはひどいのを読んだあとの口直し用にとって置きたいなぁ、と思うのも確か。
と、ええと、直前に読んだのは……カーか。
あ、あの、その、別にカーがひどいのって言うわけじゃないですけど、非常にすっきりとした口直しにはなりました。
かといって、本作が口当たりさっぱりな薄っぺらい小説かといえばそう言うわけではなく、むしろいろいろと考えるところのある小説でした。
人間の内側というか、立ち位置をじっと考えさせられます。


個人的には、性別の差というのは意味はないとは思いますが、それでも、その差からくる様々な違いというのは無視できないほどに大きいと思います。
例えばですけど、文章を読んで、その人が男か女かって、大体区別がつくものじゃないですか?
私がいくらがんばっても、どう見ても男が書いたというような文章しか書けないし。
まぁ、それは自分の力不足という指摘もありますが、というか、それしかないですけど。
それは置いておいて、わざとそうしようとしない限りは、書く文章ですら男女のあいだで差が出てくるということを言いたいわけです。
小学校から同じ国語教育を受けているのに、それって変なことだと思いません?
で、このジェンダーとかについてはあまり触れられないというのが、実情です。
なぜか? 自分が常日頃から考えていないからです。
いや、決して些細な問題だとか思っているわけじゃなく、世の中のジェンダー派(?)の論客の言うことに、どうも納得できないからだったりするんですが。あ、逆側の人たちの言うことにはもっと納得できませんけど。
はっきりこうという理由は言えないんですけど、なんとなく違うんじゃない? と。
そう言うわけなんです。


そういうよく分からないことはおいといて、片想いですよ。
いやー、まさかここまでくるとはなぁ、というのが素直な感想。
ぱたぱたとドミノが倒れていくように、「意外な真実」の連鎖が起こっていく様は圧巻。
そして、10年という年月を経た友情の形に、何とも言えぬ切なさが。
裏表紙の紹介文にもあるとおり、彼らがここまでして裏切りたくなかったのは、きっと、過ぎ去った日々の自分であったんだと思う。それを、きっと、あの頃の友人たちの向こうに見ていたのだろう、と。

[Today's tune]So You Know/InMe