絶望系閉じられた世界(谷川流)

絶望系 閉じられた世界 (電撃文庫 1078)

絶望系 閉じられた世界 (電撃文庫 1078)

■[book][ライトノベル]ライトノベル三大奇書ついに決定!(ウィンドバード::Recreation)
というエントリを見かけたので、その中であげられていたものを読んでみた。
三大奇書、と言えば封神演義三国志水滸伝ではなく、ドグラ・マグラ黒死館殺人事件、虚無への供物の方を思いだす人です。あ、一応両三大奇書とも、全部読んでた。わーい。
と、これらに並ぶものがライトノベルの中にあるのか?
ミステリ三大奇書に魅入られ、幾度も再読を繰り返しているものとしては非常に気になるところだったので。そんなわけで、絶望系閉じられた世界です。
結論から言うと、うーん、残念。
いや、そもそもが人間の精神の限界に迫ったドグラ・マグラ、ミステリというものを極北まで極めたが故に異質である黒死館殺人事件、そして、全てのミステリへのアンチテーゼ、虚無への供物に比べることが間違っていたのか。
確かに、一般的なライトノベルとは異質です。
展開の唐突さ、全編に流れる冷めた空気、どれも最近のライトノベルではあまり見かけないような気がします。
かといって、これが別のジャンルの小説か? と問われれば、否と答えるしかできなく。
未だ定義の定まらぬライトノベルなれど、これはやっぱりライトノベルとしか言いようのないものなのかなぁ、と。
けれど、やっぱり何かが足りない。
つまりは、突き詰めた感。
もうこれ以上先はない、という先端、壁。そういうものが感じられない、と。
もちろん、本書は、ライトノベルとしてかなりの周辺部にあることは確かだと思う。
けれど、まだ先端じゃない。
刀の切っ先にはほど遠く。
これくらいの裏返りなら、これくらいの絶望なら、これくらいのクローズなら、ミステリでもSFでも、いくらでも挙げることができるだろう。
これは、この本が良くない、と言うよりもライトノベルの構造的な欠陥が原因なんじゃないかと思う。
ミステリでもSFでも、コアとして考えられるものがある。
──たとえ、その定義について議論があろうとも。
一部の論客を除いて、それら核の存在に異を唱えるものはいないだろう。
それ故、核を凝縮したり、裏返したりして、さながら核反応のようにして奇書と呼ばれる異形の物語ができあがる。
ならば、ライトノベルの核は?
ミステリのトリック・ロジックに比する要素は?
SFのセンス・オブ・ワンダーに比べられる要素は?
ライトノベルの核は、未だ定まらず、その存在すら定かではない。
ならば、誰がそれを凝縮し、裏返すことができるだろう?
だから、もし、ライトノベルに奇書と呼ばれるものができるときは、それはライトノベルのコアができたときであり、そのときライトノベルは完成し、廃退がはじまるのであろう。


あ、上でいろいろ書いてますが、そう悪くはないですよ?
ただハルヒシリーズほどのものがないことも確か。
とりあえずは、ボクは天使が気に入ったので死神はだれかにあげる。

[Today's tune]雪、無音、窓辺にて。/長門有希 (茅原実里)