サンドリンガム館の死体(C・C・ベニスン)
- 作者: C.C.ベニスン,C.C. Benison,宮脇裕子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/08
- メディア: 文庫
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森薫に「理想形」とまで言わしめた、メイドミステリの佳作です。
メイド、といっても、最近日本で流行っているような、萌え〜だとか、ご主人様とゲームだとか、竹箒に刀を隠していたりだとか、おちゅーしゃですだとか、探偵といってもあなたを犯人ですだとか、そう言うのじゃないです。というより、書いてて琥珀さんがどうしてもメイドだと思えなくなってきた。というより、そんなの先刻承知ですか。
そんなわけで、秘密の地下帝国も持っていないし、洗脳もしない普通の女の子がメイドさんで探偵です。
そんな、普通の感覚が、読みやすい感じを出しています。
もちろん、雇い主に対する敬意は持っていますが、それが、おかしく見えないのは、やはり雇い主が大英帝国を統べる女王陛下だからでしょうか。
で、その女王陛下をはじめ、ロイヤルファミリーもそれぞれ特徴的に描かれています。
まぁ、ゴシップの中心になっている王室の方はほとんど登場していませんが。
そのあたりのバランス感覚というか、良いですね。
と、こういうことを書いていると、ミステリとして面白くないというか、結局2時間ドラマみたいなもの? と思われるかもしれないですが、これが意外にミステリしてます。
本作でも、女王陛下そっくりの格好をした死体に、とある人物が持ち去ったティアラ。
殺された人物から繋がる人間関係に、過去の秘密!
謎が謎を呼ぶ、という言葉がしっくりと当てはまります。
もう、出てくる人物ほとんどが怪しい、と言っても過言ではなく。
さすがに、後半の展開はやりすぎなんじゃ? と思わないでもなかったですが。
そんなわけで、軽い海外ミステリを読んでみようだとか、意外にしっかりしたミステリを探してます、と言う人から、メイドさんハァハァという人まで、幅広い人にお勧めなんじゃないでしょうか。
[Today's tune]Los Angels Waltz/Razorlight