犬坊里美の冒険(島田荘司)
- 作者: 島田荘司
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/10/21
- メディア: 新書
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死体発見から消えるまで、その間たったの5分!
謎を提示された瞬間、嘘だろ、と思いました。
いったい、この状況でどうやって死体を消失させることができたのか?
それを、ちゃんと伏線も張って解決させるとは、さすがです。
法廷でのやりとりは、ちょっと、探偵役の里美が弁護士としてはまだまだというか、一般的弁護士像とはちょっと離れているせいもあって、あれでしたけど。
けれど、その分一般読者の視点に近くて良かったと思います。
と、そうなんですよ。
この、読者=探偵という構図が、すごく良くできていたなぁ、と。
犯人・容疑者の投げかける問題=謎を、じっくりと考えさせる「小説」という媒体。
この構造が本格ミステリの良い点だなぁ、と思いました。
評論家がどうこうとか、一部作家もそれと一緒にごたごた言ってますけど、最近の島荘を読んでいたら、はっきりとした言葉では言い表せないけど、本格ミステリってこういうものなのかな、というのがひしひしと伝わってきます。
「本格ミステリ」においては、トリックとかプロットとかロジックが重要だとは思うんですけど、やっぱり、そのトリック・プロット・ロジックにどのような想い、主張を乗せるのか? というのが大切なんだなぁ、と。
ただ単純に、死刑反対、とか、えん罪をなんとかしろ、というのは簡単だけど、それを実際に人の心に届かせるのは難しいわけで。
そんな中、いわゆる現代風で、特別強いわけでもない──実際よく泣くし──ただ、ちょっとだけ、信じているものと信頼している人がいる、そんな一般読者に近い主人公──探偵が、必死に事件の真相を解き明かす。
この過程で、読者は主人公に共感し、作者の語りたいものについて、いろいろと想いを巡らすことができるようになるんじゃないかと。
と、ちなみに、なぜか岡山行ったことあるんですよね。
大学の後期試験受けに行ったんですけど。まぁ、結果は推して知るべし。
その時、倉敷までちょっと足を伸ばしてみたんですが、良かったですよ。
美観地区と大原美術館が非常に良かったです。
機会があれば、もう一度行ってみたいと思います。
[Today's tune]ばらの花/くるり