日本経済に関する7年間の疑問(村上龍)

実は、今年は小説だけじゃなくて、こういう本も読んでいこうと思ってる。
今までこういう情報はネットで十分じゃない? と思ってたわけだけど、実際にアーカイブされた情報を一度に取得するためには、現状、ネットよりも本の方が効率的だし、よく錬られている、というのがあるので。
そういう意味で言うと、これは面白い本だと思う。
村上龍が編集長を務めるメールマガジンに連載している週刊リポートを編集したものなので、元はネットで配信されていたものを、テーマごとに整理して、厳密に系統立てているわけじゃないですが、ある程度まとめて読めるようになっています。
もちろん、ネットでも同様のことができるのはわかっているけど、やっぱりこうやってまとめられているというのは、読んでいても理解しやすいし、何より、作者がどういうことを言いたいのか? というのが非常によくわかると思う。
ネット上の文章というのは、良くも悪くもライブ感というのがあって、鮮度は高いかわりに、煮詰まってない感じが感じられることがしばしば。
それに、話題もどんどん飛んでいくし。
だから、本にひとつのテーマに沿ってまとめる、というのは情報を伝えたいものにとっては、非常に有益な手段なんじゃないかと思う。
で、本の内容だけど、やっぱり村上龍村上龍だなぁ、と。
当然のことなんですけどね。
ただ、ここまで一貫して、ひとつの主張をどのテーマについても持ち続ける、というのは並大抵のことじゃないかと思います。
高校の頃、塾の講師に「愛と幻想のファシズムの上巻は傑作だから」と勧められて、はじめて村上龍に触れて以来、少なくない量の小説を読みましたが、全ての根底に流れている、「強くなければ生きられない」という主張。時には、暴力的な、物理的な強さ、そしてある時は、精神的な強さ、と、その時々で変わってはいますが、単純で、そして美しい姿が描かれています。
そして、この主張は小説以外でも貫かれていて、本書で印象的だったのは、責任ということを、強く意識していたところ。この、責任というのは、彼が書いている小説で描かれる強さのひとつの要素に他ならないんじゃないかと思うのです。
また、既存マスコミに対する、鋭い視線というのも興味深かったかな。
ネットが普及すれば既存マスコミは廃れていく、という一辺倒な考え方じゃなく、既存マスコミのどの部分が問題なのか? を厳しく指摘している。
現在ネットを中心に流れている、マスコミに対する不信感、というのは、様々な報道に対する姿勢のようなものから来てると思うんだけど、その原因がなんなのか? というのは、実はそれほど考えられてる訳じゃなくて、例えば、韓国のいろいろな問題を全く取り上げない→マスコミは韓国関連で金を儲けているからだ→だからマスコミはダメ、と言ったり、報道の裏では、マスコミは偉ぶっている→報道姿勢が問題だ→だからダメ、のように、じゃあ、そこを直せばいいんじゃね? という部分に対する指摘が多いと思います。
ただ、そこを直せばいいか? というとそう言うわけじゃなくて、政治家に対するインタビューなどでもわかるように、マスコミというものが、自らの存在意義を見失ってる状況がずっと続いているわけです。じゃあ、マスコミの存在意義はなんなのか? それを見失っているのは、どういう問題があるからなのか? と言うのを考えなきゃいけないんじゃないかと。
ま、とりあえずアレだ。
政治家に対するインタビューと、芸能人に対するインタビューも、どちらも同じことをしてるんじゃ、マスコミの意味ってないよね、ということだ。