さよならピアノソナタencore pieces(杉井光)

全曲終わったあとに、響くオーディエンスの拍手に応えるようにして、
舞台に登場したフェケテリコが、最後に見せてくれた、
激しくもあたたかなメロディです。


隣にぬくもりを感じることの幸せを、そっとピアノで歌うような、
「Sonata pour deux」。


止まれない、追いつきたい。
その道が自分の信じるものだとわかるまで──
「翼に名前がないなら」。


切ない恋心は、自覚した瞬間に溶けてしまう淡雪のよう。
「ステレオフォニックの恋」。


ハムバッカーの甘い歪みは、身体を巡る血の音のように、
遥か遠く、空に響く──
「最後のインタビュー」。


そして、ライブに疲れた体を包み込むような
「だれも寝てはならぬ」。


音楽ってすごい。それを感じさせてくれる、この小説もすごい。
表紙のまふまふのはにかんだような表情に、
大人になっていくフェケテリコのメンバの、
変わらない、純真さを見る。
カラーイラストの集合絵は、彼ら、彼女たちの思い出のアルバムの中に、
きっと、大切にしまわれているんだろうな、と思います。