夕萩心中(連城三紀彦)

「夕萩心中(連城三紀彦)」読了。
やはり素晴らしいです。
花緋文字のやるせなさ、切なさというか、何とも言えないものがあります。
そして、表題作も非常に良いです。
心中の場である薄が原の情景が目に浮かぶような。
小説自体も、非常に流れるような細やかな心情が現れていると思います。
で、日だまり課事件簿もちょっと軽めな感じがしていて、なかなかに良いです。

どれも、もちろん小説として非常に完成度の高いものではあるんですが、
それ以上にミステリとしての結末の反転が巧く決まっていると思います。
いや、そこが良いからこそ小説としての完成度も高くなっていると言うか。
特に花緋文字はぞくぞくするくらいの感覚が。
最近流行のテンションの高いのも良いですが、
やっぱりこういうしっとりとしたのが好きだなぁ、と。
私信ですが、推理研先輩のトーヤさんがこういう作風に惹かれるのも良くわかります。
こういった細やかな心情を描きつつ、その心情故に高いミステリ性を持つ、というのはなかなか見当たらないので、トーヤさんにはちょっと期待です。

[Today's tune]三つの世界/大正九年