帽子収集狂事件(ディクスン・カー)

帽子収集狂事件 (創元推理文庫 118-4)

帽子収集狂事件 (創元推理文庫 118-4)

皆様お忘れかもしれませんが、今年はカーの生誕百周年です。
書店では平積みになることもなく、雑誌でも特集が組まれそうな雰囲気もありません。


ロンドンの街を騒がす「帽子収集狂」の謎と、盗まれたポーの未発表原稿。
そして霧のロンドン塔で発見された男の死体。
その頭には、服装とはちぐはぐなシルクハットが?
誰が?
どうして?
いやぁ、こういうちょっと一カ所糸が絡まったせいで、連鎖的に事態が混乱していくようなのは、何気にカーの真骨頂という気がするなぁ。もちろん、精緻を極めた密室トリックも良いんですが、不可能性という点ではこちらも捨てがたく。やはり、トリックはこうでなくては、と思うのです。
ええと、昨年のこのミス1位にして直木賞受賞作である東野の容疑者Xの献身を見ても明らかなように、最近の日本ミステリの方向は明らかにあの方向に向かっています。
もちろん、数は少ないですが、本格のコアで意地を張り続けている作家もいますが、あまりに弱いです。主流はあくまでも叙述──あ、言っちゃった──の方向にあります。
だからこそ、というわけではないですが、今こそカーですよ!
密室とオカルティズムと、不可能性とサスペンスに満ちた本格ミステリを今ここに!

[Today's tune]Negative/Art-School