クローズド・ノート(雫井脩介)

クローズド・ノート

クローズド・ノート

携帯サイトで大人気だった(らしい)純愛小説だそうです。
……似合わないとか言うの禁止。自分だって分かってるんだから。
何となく、表紙の装丁が気になったので読んでみました。
暖かな黄色い表紙の通り、ほんわり暖かくなる柔らかな小説でした。
──と言いつつも、はっきり言ってしまうと、甘いんですよね。
すごい甘い。
突き刺すような切れ味鋭い部分がない。
言い方を変えると、毒がないんですよね。
まぁ、そういう小説にそういったものは不要だと言えば不要なんですが、自分のような後ろ向きな人間からすると、どこか物足りないのも確か。
きっと、こういう小説を素直に読めるようになれば、私もまともに生きられるようになると思う。


と、話は変わりますが、クローズド・ノートでは、万年筆が重要な小道具として使われています。
万年筆というのは不思議なもので、ただ字を書くだけのものなのに、ボールペンだとかとはどこか違います。味、というか、そういうものがあるんですよね。
ボールペンが、どこか事務的な印象があるのに比べて、万年筆は小説を書くのに使う、というイメージが合ったりするからでしょうか。
とは言っても、今頃万年筆で小説を書いてる人なんて、ほとんどいないとは思うんですが、
それでも、万年筆で書いた字は、他とは違う、生きた線になっている気がします。
クローズド・ノートの中の言葉を借りると、万年筆には「ストーリー」があるのだと思います。
ちなみに、私が持っている万年筆は、父親からもらったPAKERのDUOFOLDです。
http://www.a-pen.com/pkr-duo-pearl.html
万年筆は使いにくいとかいうイメージがあるかもしれないですが、やはり書き味はなめらかで、書くという行為においては、これ以上のものはないだろうと思いますし、ボールペンよりも線が太くなったりして、細かい字を書くのには向かないんじゃないか? と思われるかもしれないですが、そんなことは全くないし。
普段から字を書く機会が少ない人でも、万年筆を1本持つのは良いことだと思います。
……長く、付き合っていけるものだし。

[Today's tune]Samurai/Number Girl