少女七竈と七人の可愛そうな大人(桜庭一樹)

少女七竈と七人の可愛そうな大人

少女七竈と七人の可愛そうな大人

遺憾ながら美しくうまれた少女と、彼女を取り巻く大人たち。
美しい少女が、成長していくほんの一瞬の、変わりゆく季節を鋭く切り取っています。
このあたり、さすがは桜庭一樹、と思わせるのがありますね。
そしてうまいなぁ、と思ったのが、後輩こと緒方みすずの存在。
連載を読んでいるときはそれほど感じなかったんですが、こうしてまとめて読んでみると、残される側の、まだ脱皮しきれない姿というか心情というか、それがきれいに出ているなぁ、とか。
あと、小説全体に漂う、静かな雰囲気がたまらなく良いです。
停滞してる、というのが良い表現かな? と思いますが、いかがでしょうか?
北国を閉ざす、長い冬。
それでも、いつかは訪れる明るい春。
その向こうにあるのは、刹那の夏。暮れゆく秋。そしてまた長い冬。
けれど、ほんのひととき輝く春に向かって物語は終わります。
旅立ちと、別れと。


自分にとって、あの町はどういう存在だったのだろうと考える。
失われた十年」を過ごした町。
そう言ってしまえば、いろいろと簡単に片付くかもしれない。
いろいろあったようで、結局何もなかった。
けれど、そう言って捨ててしまうのには、なぜかためらいがある。
あのころ感じていた停滞感とか、絶望を、このように美しい形で表すことができるのなら。
そうすれば、きっと何かが救われるのかもしれない。