アキハバラ@DEEP(石田衣良)

アキハバラ@DEEP (文春文庫)

アキハバラ@DEEP (文春文庫)

はっきり言ってしまうと、メイド喫茶(作中ではコスチューム喫茶)の描写は正確であるとは言えない気がするし、オープンソースの考え方なんかも、ちょっと違うかなぁと感じることがあったり、何よりこんなんでAIできてたまるかよ、っていうのがあったりで、突っ込みどころは満載だと思うんですが、細かいところ気にしなければとっても面白いです。
実際、ラストシーンで泣きそうになってしまったし。
というより、駅前のベローチェじゃなかったら、うちでひとりで読んでたら絶対に泣いてた。
もう、これだから石田衣良はずるいなぁ!
たまに(?)秋葉原を訪れるものとしては、あの街で歩き回る彼らの姿が見えるようで、ああ、この辺りはうまいなぁ、と。
それぞれに欠点を抱えた者同士が、ひとつになって何かをやろうとする。
その不器用さというか、それがまぶしくて、羨ましくて。
あー、もう、小説として良いか悪いか以前に、こういうの弱いんだって!
だから、電子生命体とかアンドロイドとか、そう言う方面にものすごく弱いんだって!


秋葉原って言う街は、本当に面白い街だと思います。
それほど頻繁に行ってるわけじゃないですけどね。
表通りにあふれる観光客を避けるようにして一歩裏通りに入れば、そこは混沌が支配する裏通り。
どっさりかごに入れられたジャンクに、山と積まれたDVD。
怪しげな東洋人が明らかに違法なソフトを売る隣では、同人ショップが極彩色の看板をだし、メイド喫茶の扉があらゆるところに待ちかまえている。
渋谷とか新宿とか、そういう街じゃあり得ない風景が、ここにある。
そっち系の人にとっては、ほかのどの街よりも魅力的な街。
駅前にきれいなビルができたり、規制が厳しくなったりで、街の風景も少しずつ代わり始めているけど、それでも、この街は変わらないような気がする。
そこに集まる人種は、少しずつ変わっていくだろうけど、それでも、奥底に流れる何かは変わらないんじゃないのかなぁ、と。
と、新参者の僕が言ってみました。

[Today's tune]Dentaku/Kraftwerk