ライトノベルの位置づけ

さて、今回の直木賞というのはそこそこには転換点となるのでは? と思われていた理由のひとつに、候補作として「赤朽葉家の伝説桜庭一樹)」が挙げられたことがあります。
まさか、ファミ通エンタメ大賞の名が、直木賞候補者のプロフィールに踊る日が来ようとは!
で、結局はそんなことも関係なくしょんぼりな結果に終わったわけですが。
そういうわけで、ことさら、いわゆる「ライトノベル」とその他の小説の差というものを考えてみたわけですよ。


結論から言ってみると、ライトノベルというのは「周辺の文学」とでもいうべきものなのかなぁ、と。
「まっとうなエンターテインメント」とか「本格ミステリの王道」とか「ハードSF」とか、そういったものから少しずつ外れたものが集まってできたのが、「ライトノベル」と呼ばれる小説群なんじゃないか? と。


個人的なバックボーンのひとつがミステリにあるので、それではなしをさせてもらうと、
ライトノベルとミステリの関係の中で特徴的だと思ったのが、トリックスターズシリーズ(久住四季)と、谷原秋桜子のそれぞれの進み方。
ミステリとしては両者とも勝とも劣らない構成を持っていると思います。
しかし、片方は「ライトノベルレーベル」を追われ、新本格ムーブメントの片輪となった東京創元社に安住の地を見いだし、もう片方は「ライトノベルレーベルの中のライトノベルレーベル」とも言える電撃文庫で快調に作品を発表し続けています。
この差はいったいどこから出てくるのか?
──もちろん、小説の巧緻というのはあるかもしれないけど、ここではそれは置いておく。
やっぱり、「ミステリ以外の要素」というものが原因としてあるんじゃないかと。
トリスタは、「魔法」というものを前提としてミステリを構築しています。
比較する谷原秋桜子は、そう言った要素はなく、基本的には「現実世界で起こりえること」を前提としてミステリを構築しています。
(登場人物がラノベ的かもしれないけど、そこは「ミステリには本質的に関わらない」ものだと考えます)
この、「魔法」という要素が、トリスタを「ラノベ」たらしめている理由になるんじゃないかと。
もちろん、「魔法があるからラノベ」という暴論に出るわけじゃなく、そんな理由だったら西澤保彦のほとんどがラノベになるよ! というわけで。
今度は、そのあたりの違いというものを考えなきゃいけないと思うんですけど、もうそろそろ眠くなってきたんでここら辺で終わります。

[Today's tune]プライベート・キングダム/the pillows