“文学少女”と月花を孕く水妖[ウンディーネ](野村美月)

“文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫)

“文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫)

今度の「文学少女」は、泉鏡花ですよー、と。
あー、泉鏡花、密かに好きなんだよなー。
あの、計算され尽くした混沌というか、読むだけで無限の世界に引きずられるような文体がたまらないんですよね。
なんというか、文学的でありながらも、数学的な美しさをたたえているというか。
と言いつつも、今回の文学少女とはあんまり関係ないかなぁ、とか。
いや、ストーリー自体は、鏡花の作品をベースにはしているんですが、いつも通りそれ以上でもそれ以下でもなく。
何となく、重たさというかなんというか、遠子先輩が食べ物に例えるがごとく音楽に例えてみると、アルペジオが本当にバラバラに聞こえてしまうというか、本当にきれいなアルペジオだと静かに立ち上がる重厚な壁に聞こえるものが、向こう側の光が透けるような和紙に思えてしまうというか。
ただ、その和紙には、きれいな透かし模様があって、それが薄暗い部屋の中に微かな陰影を創りだしているような、そんな余韻を感じさせる音。
まぁ、そんな感じです。
ストーリーだとかは、ほかの感想系サイトを見れば、飽きるほど書いてあると思うし、そんなのをまとめる気はさらさらないんで、これくらいにしておいて、泉鏡花とも全く関係ないことを書いてみようと思うんだけど、具体的にどういうことを書こうかというと、私服遠子先輩だとか、どんだけ恐がりなんだ遠子先輩っ! だとか、無防備過ぎっ遠子先輩だとか、あー、このヤキモチ焼きの遠子先輩だとか、三題噺で酔っぱらっちゃう遠子先輩だとか、ちっちゃいメイドさんだとか、もう、危ないね。
うん。かなり危ない。
そして、ラストのほうのあれは、やっぱりあれということで、さらには、あれのところはこういうことになるのか! と言う感じで、もうそろそろラストが近いことを存分と感じさせつつも、やっぱり泉鏡花は良いよなぁ、と思い出したりしている今日この頃です。


ところで、泉鏡花って、どのくらいメジャーなんだろうか……
高野聖くらいはみんな読んだことあるんだろうか……個人的には短編のほうが好きなんだけど……というより、基本的にはどの作家でも短編のほうが好きだなぁ……

[Today's tune]Le Fou/SUGIZO