現代萌衛星図鑑(しきしまふげん)

現代萌衛星図鑑

現代萌衛星図鑑

折りに触れて語ってると思いますが、人工衛星とか好きです。
というより、宇宙とか好きです。
男の子なんで。
そんなわけで、現代萌衛星図鑑です。
つい先日、「かぐや」が月に還ったかりというのもあり、
ちょうど良いタイミングですね。

彼女の名前は、きっとみんな聞いたことあると思う。
静止軌道上から、ずっと地球を見守ってくれているやさしい眼差し。
──いや、「彼女」じゃない。「彼女たち」。
6人もの姉妹がずっと優しく見守ってくれています。
その中でも一番波乱にとんだ生涯を送った五女が主人公。
ひまわりの花言葉「あなただけをみつめます」が、これほどに似合うのは、
やっぱり彼女だけだと思うんだ。

地上で人間たちが核弾頭を互いに狙いあってるころ、
彼女たちは遠い宇宙で、アメリカ、ヨーロッパ、そしてソ連の娘たちと協力して、
ハレー彗星という敵に立ち向かっていきました。
アメリカ、ヨーロッパ、ソ連の娘たちよりも、
小さく、そして幼かった彼女たちだけど、立派にその役目を果たします。
そう、まるで、地上の人間たちに、
「わたしたちみたいに、みんなで協力すれば、どんなことだってできるんだよ?」
そう伝えているかのように。

  • 技術試験衛星7型 きく7号 おりひめ・ひこぼし

そして、宇宙まで行ってラブラブっぷりをみせつけてくれたのが、この「おりひめ・ひこぼし」。
「遥かな宇宙で、たったふたり抱き合うために」。
それが、彼と彼女のミッション。
でも、少し臆病すぎるがゆえに、ひらいてしまった二人の距離は12km。
傷付けるのが怖かった?
でも、大丈夫。
二人を見守るライトスタッフの努力のおかげで、二人はまた抱き合うことができました。
そして、最後に送った二人のツーショット写真。
本当に素敵なカップルです。

  • 環境観測技術衛星 みどり2

姉妹そろっての不運に見舞われたのが、みどりとみどり2の姉妹。
地球の美しい姿、地上で起こっている現実を見せてくれた彼女だけど、
その最期はあまりにも悲しくて。
でも、彼女たちの経験が、次の娘たちに引き継がれているんだから、
みどり、みどり2の人生にも大きな意味があったんだと思う。

  • 次世代型無人宇宙実験システム USERS

微重力状況での新素材、という新しい子供を育てる優しい母親のような──それが、USERS──SEMです。
優しく、しっかりとかいなに抱いた子どもとのお別れ。
でも、彼女はちゃんと地上で待つスタッフの元へ、子どもを届けてくれました。
それだけじゃない。
その最期まで、優秀な衛星であり続けました。
彼女も、今後、自分のような衛星が増えて、子ども──新しい素材、無重力下での新発見が、
次々と出てくることを祈っていると思います。

たぶん、日本の衛星でもトップクラスにトラブルにみまわれているのが彼女じゃないでしょうか?
1円玉を持ちあげる程度の力しかないエンジンで、懸命に向かった3億kmの果て。
日本ロケットの父、糸川博士の名前が付けられた小惑星に、彼女の足跡は残っています。
そう、しっかりと胸に抱いていった、88万人の夢といっしょに。
けれど、彼女と一緒に行ったミネルバは、たった1枚──けれども、とても重要な、大切な、貴重な写真を地球に届けてくれたけど、本来の目的は達成できませんでした。
はやぶさ自身にも、試練が訪ずれます。
成功したように見えたイトカワへのタッチダウン
しかし、途絶えた通信。
もう一度、繋った彼女は、それまでの彼女では……
でも、彼女は懸命に宇宙を飛んでいます。
確かに、孤独かもしれない。
でも、地球には彼女を待つたくさんの人がいるのです。
彼女が、イトカワの欠片を持っているかどうか、それよりも、純粋に、彼女が還ってくるのを祈りながら。

  • 月周回衛星 かぐや

最後は、つい先日月に還ったかぐや。
彼女については……ああ、この前のエントリを参照してください……
http://d.hatena.ne.jp/kazutokotohito/20090610#p1
巻頭に載せられた、彼女のストーリーコミックが、非常に良いです。
彼女の魅力を十分に語っています。


さて、そんなわけで、ちょっと語り過ぎかな? と思うけど、
こんなんじゃまだまだ足りない!
それだけ良い本でした。「萌え」という言葉にまどわされるかもしれないけど、
それを抜きにしても、十分に楽しめる本でした。
ちなみに、読んでる途中、何回も涙ぐんだのは、ここだけの秘密だよ……