若干の眩暈とともに帰宅。
ビル・エヴァンスのピアノが、耳を叩いていた。
跳ねるようなメロディ。
一見優しげに聞こえるが、その実、音色は狂ったような激情に彩られている。
一音一音が、精神を苛んでいく。
一般に、バンドは互いにひとつの音楽を作り上げていく、協調的なものであるが、ジャズのトリオというのはちょっと違う。
確かに、ひとつの音楽を作り上げていくところは同じだ、しかし、その過程では、協調とはほど遠い、三人の闘いが行われている。あまりにも激しい、緊張感は上限を知らず高まっていく。
しかし、なぜ最後にできる音が、こんなにも甘いのだろうか。
奇跡、そんな言葉が自然に浮かぶ。


それでも、眩暈は収まらなかった。


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[Today's tune]Some Other Time/Bill Evans Trio