少女七竈と七人の可愛そうな大人たち 第1話 遺憾ながら(桜庭一樹)

僕が小学生のときに移り住んだ街は、北海道で2番目に大きい街だと言いながらも、結局は過去の栄光にすがって生きながらえてるに過ぎない、斜陽の街だった。
冬になると、雪がたくさん積もった。
それまでを太平洋沿いの港街で過ごした僕には、そんなにたくさん雪が降るのがただただ驚きで、学校の体育では、好きなスケートじゃなくてスキーが行われるというのがちょっとだけ淋しかった。
小学校を卒業し、中学校を大過なく過ごし、高校生になっても、僕はその街にいた。
高校は、北海道でも有数の進学校を自称していて、事実それなりに全国各地への大学へと生徒たちを送り出していた。
校舎は10代の生命力にあふれていたけれど、斜陽の気配はふとした瞬間に僕を襲っていた。
もちろん、ほとんどのクラスメイトたちは、とても楽しそうに毎日を過ごしていた。
芥川を熟読したり、銀河鉄道の夜を繰り返し読んだり、村上龍を乱読したり、世界の中心で愛を叫んだけものをわかったつもりになっていたような、恥ずかしい高校生活を送っているような人は、僕のほかにはほとんどいなかっただろう。
結局、僕がその街をでたのは、大学受験に失敗して浪人生活を送るために札幌に出るためだった。
きっと、堕ちてゆくものに惹かれる強い傾向は、この斜陽の街で過ごした10年あまりの期間が大きく影響しているのに違いない。


と、ほとんど関係ない自分の話からはじまった少女七竈と七人の可愛そうな大人たちの感想。
ええと、舞台が旭川なんです。
ただ、それだけの話からこんな話題を延々と書いていたわけです。
そしてさらに言うと、七竈が通う高校は何となく、私が通っていた高校を思いださせます。
地方都市では圧倒的な進学校
校舎の周りには、街路樹の七竈の赤い実。
七竈の母が、未だ何かにすがる旭川
雪風の父が、過去の栄光の旭川
たぶん桜庭一樹旭川とは関係のない人だとは思うんですが、あれほどに旭川の雰囲気をだせるというのはさすがだなぁ、と思います。
で、あの、ちなみにうちの高校は制服がなくて私服で、セーラー服に萌えると言うことがない不健全な高校生活を送ってましたが何か?

[Today's tune]クロエ/ART-SCHOOL