少女七竈と七人の可愛そうな大人 第2話 犬です(桜庭一樹)from 野性時代 vol.25

舞台が旭川と言うことで気になって、結局第2話も雑誌で読んでしまった。
いつかは単行本にまとまるとは思うんですけど。
今回は、老年の犬と死の匂いを纏った男と七竈のストーリー。
ほんのちょっとだけならなんでも許せる気がしてしまう、という七竈。
個人的な見解ですが、旭川の街には、このちょっとだけならなんでも許せてしまうという台詞が似合う気がします。
それも、温かい気持ちで許せるというわけではなくて、皮肉混じりの感情で、可愛そうだから許してあげる、というそんな気持ちが。


ところで、前回の感想といい今回といい、私、なにげに旭川をおとしめるようなことしか書いてない気がしますが、気のせいでしょうか?
まぁ、確かに寂れる一方の駅前とか薄汚れていく街並みとかまったく先の見えない暗闇を走っているような市政とか、悪いところを挙げればきりがないくらいの街ですが。ちなみに、現市長は市長選挙の度にいろいろと噂がたつものの結局組織力と何かの力で何事もなかったかのように当選を繰り返すすごい人です。
と、また根拠のない戯言で旭川をおとしめてしまいましたが、私、旭川好きですよ?
だって、「失われた10年」のほとんどを過ごした街ですから。
あの10年がなければ、今こうして文字を打ち込んでいることはなかったでしょう。
もし、希望の見える暖かな街で健やかに過ごしていたのなら、もっと「健全」な精神を持っていたでしょう。
失われた10年で、名実ともに何もかもを失った街だからこそ、これから何かを創り出せていくんじゃないかとも思うんです。
高校時代の国語の先生が、「今の旭川には小説の舞台になるような場所がない」と言っていました。
旭川でも、戦前戦中を考えると、三浦綾子の小説の舞台になるような場所もあったんですが、それも今は昔。氷点の見本林だって、今は一部の三浦綾子マニアしか訪れないような淋しい林になっています。
最近は、旭山動物園が好調なようですが、あそこも園内は良いですが、一歩外に出ると本当に淋しいものです。
動物園を舞台にした小説がもしあったとしても、周りの雰囲気と乖離したにぎやかな園内が描かれるだけでしょう。
そういうのがあったから、実は桜庭一樹旭川を舞台に小説を書くというのを知ったときは本当にびっくりでした。そして、旭川の雰囲気がうまくでている上に、小説としてきちんと舞台になっていたので2重にびっくり。
少女には向かない職業といいこの小説といい、桜庭一樹「街」を書くのがうまいのかもしれません。

[Today's tune]ループ&ループ/ASIAN KUNG-FU GENERATION