喉切り隊長(ジョン・ディクスン・カー)

鬼才カーが贈る、歴史ミステリの傑作! とかあおり文句をつけてみたところで、普通の人はカーなんて知らないよね……と淋しい思いをしてしまいそうなことひとです。
1805年、英仏海峡でイギリス侵攻を今や遅しと待ちかまえるフランス軍を恐怖に貶める「喉切り隊長」。果たしてその正体とは?
カーというのは驚愕の密室トリックをいくつも創作したせいなのか、どうしてもトリックだとかそう言うのを中心に語られることが多いんですが、意外にもドラマというか、そういうもののほうがこの作家の本質なんじゃないだろうかと思います。
本作でも、喉切り隊長はいったい何者? という謎が気になりはしますが、それよりもアランはいったいどうなるのか? マドレーヌの運命は? というのに目を奪われてしまいます。
ミステリのトリックとストーリーのおもしろさと、その両方を持つカーは、誤解されるかもしれませんが、トリックが素晴らしい2時間ドラマ、と言えるかもしれません。
……いや、こんなこと言ったらカーに失礼ですね。すいません。
とりあえず、カーはもっと一般からも評価されて良いんじゃないか、と思いました。

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