にょわー!っときらりん☆

ハレルヤ ラ ミゼラブル Do you wanna show me how low & low?"

そう歌い、両手を大きく広げる。
ホールいっぱいのオーディエンスは拳を振り上げてそれに応える。
歌いながらも、優しく、満足そうな微笑みを見せる。
それは、まるで天使の微笑み。
広いステージをところ狭しと駆け回り、腕を振り、くるくるとまわる。
とても楽しそうに歌い、踊る、その人物の名はhide。X JAPANのギタリストにして、ソロのhide with Spread Beaverでも数々の名曲を世の中に生み出した、不出生のミュージシャンである。
1998年に急逝したあとも、数多くのミュージシャン、そしてたくさんのファンに今も愛されている。


残されている彼の映像を目にするとき、僕の脳裏には、あるアイドルの姿が被って見える。そのアイドルの名前は、諸星きらり。この8月にCDデビューを飾る、アイドルマスターシンデレラガールズから彗星のようにデビューした、今をときめくアイドルである。

オイデ SPEED FREAKS BABY ROCKET DIVE
翼広げて君がFLY


185cmを越える長身のきらりが見る、ステージの上からの景色は、また格別なものだろう。彼女はきっと、満員のホールを見て、はぴはぴ〜っと笑うのだ。
その満面の笑顔を見て、僕らもまた自然と笑みがこぼれる。
長い手足を思うがままにリズムに乗せ、縦横無尽に駆け回る。
僕らは、きらりの一挙一投足から目を離すことができない。
見るものを引きつけて、離さない、太陽のようなライブ。
きっと、彼女のステージは、そういうライブだ。

過ぎた夜の数を 数えずに過ごそう
君と集中治療 続けていこう
・・・そして君は僕のクスリになる


しかし、hideがステージの上で笑みを浮かべていた裏には、どのような想いがあったかを、僕らは忘れてはいけない。
彼は、誰よりも優しかった。
ファンを大切にする逸話には事欠かない。
お高く止まって、理想を歌うだけの軟弱な奴らとは違う。
時には、バラエティ番組にも出演して、自分が想うもの、自分の想う音楽を届け続けた。
彼は知っていたのだ。
歌は、誰かに届かなければ、歌ではないということを。
一人でも多くに自分の歌を、想いを届けるためには、どうしなければいけないかを。


きらりは歌い、そして祈る。
「はっぴーですかー☆」
と、僕らに幸せを届けようとする。
そのためなら、彼女はどんなことだってするだろう。
いや、決して暗さをみせようとしない彼女の態度、それ自体がすでに彼女が届けようとする幸せの一部なのだ。

わずかに見えた あの空の向こう
鳥達は南へ
もう一度飛ぼう この糸切り裂き
自らのジェットで
あの雲が 通り過ぎたら


その暖かな微笑みを僕たちに届けるために、彼女はどれほどの苦しみをその身に受けているのだろうか?
他のアイドルを見てみるといい。
今や、アイドルというものは、その舞台裏全てをエンタテインメントとして提供しなければならない。本来ならば観客には見えないはずの場所で、競い、争う姿。それを、「みんなで努力している」などというきれいな言葉で包み、ごまかしている。
観客達は、その欺瞞を受け入れ、自ら踊りはじめる。
金さえ払えば、いくらでも踊り狂うことができる、地獄の中で。
そんな中でも、きらりは変わらない。
きっと、変わらない。
ステージの上と同じように、裏表のない、屈託のない笑顔を浮かべる。
彼女は決して見せることはない。
苦しむ姿を。
誰かを嫉妬する姿を。
思い悩む姿を。

ever free この夜を突き抜けて
目覚めれば 飛べるのか Freeに?


暗い部屋。
大きな身体を、膝を抱える少女。
それがきらりだ。
明るさの裏には、影がある。
それがきらりだ。
彼女は、どれほどの想いを飲み込んでいるのだろう?
その大きな身体の中、どれほどの悲しみを、苦しみを閉じ込めている?
閉じ込めて、閉じ込めて、閉じ込めた想いは、やがて反転する。
夜は、明ける前に最もその闇を深める。
極限まで0に近づくことは、反転させれば、即ち無限への漸近を意味する。

Singin' my song for me.
Singin' your song for you.


彼女が歌うのは、彼女の歌だ。
そして、それは、僕たちの歌だ。
膝を抱えてうずくまる彼女は、明日の見えない毎日の中で彷徨う僕たちだ。


さぁ、応えようじゃないか。
彼女は、きらりの微笑みは、僕たちを十分に照らしてくれただろ?
じゃあ次は僕らの番だ。
その手に持ったサイリウムを折って、高く高く、彼女に届くまで掲げるんだ。
君の歌が届けば、きっと彼女も
「にゃはー! ハッピーよねー☆」
となるはずなのだから。