祈りの海(グレッグ・イーガン)

祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)

祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)

いやー、さすがヒューゴー賞ローカス賞受賞の名に恥じませんね。面白い。
と言ってますが、実際のところむこうのSFのすごい賞くらいしか認識ありませんがっ。
個人的には、前半にあるキューティなどの切れ味の鋭さも好きですが、それよりもイェユーカや表題作のような、ハードSFでありながらも人間の生物としての側面を感じさせるものの方が好みかも。
いくら理性とか文明とかいろいろなもので押さえつけようとしても、人間が奥底に持っている野性というか、生き物としての在り方というのは消すことができないと思うので。
その、生き物としての在り方とかが、世界(社会)と自分のつながり方、アイデンティティの問題へと繋がっていくのかなぁ、とか。


いわゆるセカイ系の諸作品を見てみると、不思議なまでにSF分野との親和性があるように思えてなりません。
──こういうことを書くと、SFの人から刺されるかもしれませんが、そこは一個人の戯言としてご容赦を。そのあたりのところでリアル・フィクションとか言っていたんだろうし。
で、どうしてSFとセカイ系に親和性を見ているのかというと、SFというのが科学──思考によって自分というものを世界または社会の中で位置づけようとする小説で、セカイ系はあらゆる手段により自分をセカイの中心に据えるものだと思ったりするからで、思考というのはどうしても考える主体があり、あれ? その主体を中心にすると世界とかセカイの中心というは考えている本人なのかなぁ、とか言うわけです。
まぁ、とりあえずは世界の中心で愛でも叫んでおけばいいと思うよ?
エアーズロックじゃなくてクロスホエンね。

[Today's tune]Juicebox/The Strokes