最終兵器彼女外伝集 世界の果てには君と二人で(高橋しん)

いわゆる「セカイ系」の代表と呼ばれ、しまいには映画にまでなってしまったサイカノ、最後のコミックスです。これまでに発表されたサイカノと同じ世界観の短編がまとめられています。
まずは、「わたしたちは散歩する」。
実は、サイカノがあれまで売れたという要因のひとつに、「新しい共通幻想」というものがあったんじゃないかと思っています。となりのトトロを「懐かしい日本の風景」と言っていたように、僕たち、私たちが「過ごしたはず」の高校生活、青春というものが、描かれているというのがあるのかなぁ、と。
そう考えると、この短い数ページの作品が、最もサイカノらしいと言えば、らしい1編なんじゃないかと思うのです。
……まぁ、結局は幻想なんで、こんな青春送ってないんですけどね。
次が「世界の果てには君と二人で。あの光が消えるまでに願いを。せめて僕らが生き延びるために。この星で。」……タイトル長っ!
イカノ本編は、北海道と仙台が主な舞台として描かれていて、あー、ここ見たことあるー、というのがいっぱいあって、それがまた個人的にですが作品の魅力となっていたわけですが、これも横浜が舞台になってるんですね。以前読んだときにはそれほど思わなかったわけですが、こういうふうに、日常見ている風景が舞台になることで、近さというか、そういうものを感じますね。うん。
で、「LOVE STORY,KILLED.」
あー、やっぱり僕これだめだ。
冷静に読むことできないです。
ラストに向かうにつれて、ページをめくるのが怖いような、でも、進まずにはいられないような。
結末まですべて知っているはずなのに。
なのに、どうしてもその思いを止めることができない。
ちょっとまえにも、こんなニュースがあったように、今でもイラクで、そして、世界の各地で同じような事件が毎日のようにおこってます。
目覚めれば、野戦病院のベッドにいるような、そんな甘い物語なんかじゃなく、撃たれれば死ぬ、容赦のない物語。
圧倒的な現実に。
ラストは「スター★チャイルド」。
これは最後カラーページになったところで、泣きそうになった。
ああ、あの世界は終わってなかった。というのと、こんなにもなってしまった。というのと。
たぶん、猿の惑星で地下鉄の駅のプレートを見せられたときの、アメリカの観客というのは、もしかしたらこんな気持ちだったんじゃないだろうか、とも思う。


戦争とか、経済の事とか、誰かが悪いことをしただとか、遠い外国で飛行機が落ちただとか、今、こうしているあいだにも、このそれほど広くない星のどこかで、どうしようもなく涙を流している人が、信じられないくらいにたくさんいるんだと思う。そういった、悲しみの連鎖とでも言うものに対して、僕は、いったい何をすることができるのだろうか? と考えると、自分の存在というものの小ささに、たまらなく惨めな気持ちになってしまう。
それでも、今、こうして生きていることに、ほんの小さな意味でもあってほしいと願わずにはいられない。
──利己的?
この想いをそう呼ぶのであれば、僕はそれを受け入れても良いと思う。
そして、恋をしたい、と思う。

[Today's tune]Exit Music (For A Film)/Radiohead