SHIROBAKO14話に見るプロジェクトリスク

去年の文学フリマ

こういう本を書きました。
#Kindleで販売中ですので、興味がある方は是非。


上記の本ではちょっとしか触れられなかった部分ですが、チームでプロジェクトを進める際に重要なことがあります。SHIROBAKO14話で、その部分について非常に気になるところがあったので、ちょっとエントリ書いてみようか、というのが趣旨です。


SHIROBAKO14話は、新作アニメの声優さんを決める会議でしたが、その会議の中に、いくつかのプロジェクトリスクがちりばめられていました。なので、それを列挙してみようと思います。

  • プロジェクトの目標が明確ではなく、関係者の中で共有されていない

これが、最大にしてもっとも深刻なリスクです。
ただアニメを作りたいのか、そのアニメを通して何を達成したいのか、という部分が明確になっていません。明確になっていないのだから、当然関係者の間でそれは共有されていません。
良い作品を作りたいという監督はじめスタッフ、自社の都合を優先させたい出資会社、この両者で共有されていない、というのはアニメでも十分に(ある意味戯画的に)描かれています。
プロジェクトの目標が明確になっていない場合、どのようなリスクが考えられるか、ということについてですが、成果物──SHIROBAKOの場合、アニメのできに直接影響が出てくると思われます。
#SHIROBAKOはあくまでフィクションなので、そのあたりはうまく回避すると思いますが。
「でも、監督はじめスタッフは良い作品を作るつもりなんだから、アニメのできは大丈夫なんじゃない?」
と思うかもしれません。しかし、プロジェクトでの目的とは、すなわちそのプロジェクトの中でもっとも力を入れるところです。そして、プロジェクトでもっとも力を入れるところというのは、すなわち、もっともお金をかけるところです。
出資者はそれぞれが一番お金を出したいところにお金を出します。
つまり、お金を出す人、お金を使ってものを作る人、それぞれの思いが一致していなければ、それがリスクになるのです。

  • プロジェクトメンバの姿勢

これは、前話からあった部分であり、Twitterなどでも言われているところですが、編集者の態度というのがまさに他人事。原作者、その原作者との窓口となる編集者がプロジェクトに対して他人事というのは、後からプロジェクト全体をひっくり返される可能性が大いにあるということです。
#そのための議事録、メールでの連絡など、後からひっくり返されないためのエビデンスがあるわけですが。
#個人的な経験では、アニメ業界、声優業界は、この手のエビデンスに乏しいような気がします。あくまで個人的な経験であり、実は違うのかもしれないですが。


あと、混迷する会議に鶴の一声を響かせた音響監督。彼の態度にも問題がないとは言えないと思います。
確かに、あのような会議では、一歩引いて見る人が必要かもしれませんが、それはファシリテータもしくは有識者として会議に参加している第三者が引き受ける役割です。今回の彼の描かれ方は、そういう描かれ方をしているように見えました。
実際の仕事、会議などでも、一歩引いて評論家的な役割をし、正論を述べることは非常に重要ですし、実際、それが必要な場面は多々ありますが、音響監督として音響──声に責任を持つのであれば、正論を述べるよりも、決定することが役割です。
この、「決めるべき人が決められない」というと、その役割にある人が優柔不断で……というパターンを考えがちですが、実は、この「評論家になる」というパターンが多かったりすると思っています。


というわけで、長々と書きましたがここら辺でまとめます。
はい、みゃーもりかわいいですね。みゃーもりかわいい! みゃーもりかわいい! みゃーもりに制作進行されたい! もうね、俺も隣にみゃーもり置いて仕事のぐちとか言いたいわけですよ! 逆にみゃーもりの仕事のぐちとか聞きたいわけですよ!
じゃあ、ちょっとみゃーもりに制作進行される世界線に行ってきますね。